空をうつした湖みたいな青 『リズと青い鳥』感想
青色姫草です。
今回は仕事に対する前口上はナシです。なんせ今回は会社サボって映画を見に行ったからな! 大丈夫、代わりはいくらだっているもの(クビにならないとは言っていない)
そんなこんなで新宿まで足を伸ばして『リズと青い鳥』を観てきました。
『リズと青い鳥』は京都アニメーション制作で、TVアニメ『響け! ユーフォニアム』の外伝的な位置づけで――なんてしゃらくせえ前情報もなしです。ネタバレオンパレードなブログになるんで、とりあえず映画を観てから読んでくれ。
以下、感想。
まあ、すごい。「すごい」って形容詞しか書けないのは私に語彙がないからだけれど、この「すごい」は詰め込まれた情報量の多すぎてその全てを表すための言葉が見つからないからの「すごい」。
鎧塚みぞれの一途な心持ちが描かれる濃厚な90分。
されど傘木望美が培ってきたものと向き合う90分。
一本の映画なのに筋違いの物語を見せられているようなもどかしい人間関係。必死に近づこうとする気持ちがようやく触れ合う。けれど、触れ合ったからこそ相手との距離を測ってしまう。
この先、鎧塚みぞれと傘木望美が一緒の道を歩むことはないのだろうけれど、二人の胸には約束だけが永遠に、致命傷のように痕が残り続ける。悲しいくらいに現実的で、痛ましいほどに気持ちが溢れていて、解せないほど愛が重い。
……深夜テンションで西尾維新っぽくなってないですか?大丈夫ですか?
とかく、『リズと青い鳥』が魅せた残酷でハッピーな物語から、感想をつらつら書きます。
- 空をうつした湖みたいな青
- 劇中曲『リズと青い鳥』第三楽章。焼け野原
- 他の人の感想が有益であるというお話
1.空をうつした湖みたいな青
はい、いつも通り目次の第一項目が本編です。ここだけでも見てってなー。
『リズと青い鳥』に登場する比喩に無意味なものなんてない、というのは3番でお話するのですが、その1つです。
というか、『リズと青い鳥』でもっとも気になったのがこの一言でした。
(※なお、正しく聞き取れていたかは皆さまの判断にお任せします)
それは冒頭、リズが森の中で初めて青い鳥を見つけるシーン。
「うわあ、綺麗」リズは青い鳥を手に載せました。
「空をうつした湖みたいな青ね」
リズがそう口にすると、青い鳥は飛び立ちました。
ここで映画館の一席にいた私は首を傾げました。
「……長くね?」
この比喩、不当なまでに長いです。
だって、ここで表現したいのは「青色」です。青を表す言葉は様々ありますし、この比喩の一部を切り取って「空みたいな青」「透き通った湖みたいな青」でも表現できます。
なんでわざわざ長い比喩を用いたのか。これが小説なら「青」という色は文字から読み取ってイメージが必用ですが、アニメーションなら「青い鳥」が目に入るのですから、青の印象付けなんて必要ありません。ナンセンスです!
それでも「空をうつした湖みたいな青」とリズは口にしました。
ここから推測です。
この比喩は、リズのいつも視ている景色を表しているのだと考えました。
ひとりぼっちのリズはいつも下ばかり見ていた。
だから見上げた先の空ではなく、俯いた先の湖の青が頭に思い浮かんだ。
森に住むリズは動物たちが傍にいても寂しくて、ひとりぼっちを感じていた。
青い鳥が一緒にいたいと感じた「ひとりぼっちで寂しいリズ」は青い鳥(傘木)のひとりよがりな思い違いではなかった、ということが言いたいのだと思いました。
冒頭で望美が「私とみぞれみたい」みたいなことを言うと思うんですけれど、それを与える側の望美が言うのはすこし自尊心が高くないか? と思っていたのですが、この台詞と照らし合わせると傘木望美は「ひとりぼっちで寂しいと感じる」鎧塚みぞれを出会ったときから理解していたということになりませんか?なりますよね。なったんです!
観ている間にここまで思いつのは無理ですって吉田さん……!
この一言が原作にあるかは存じ上げません。(原作はユーフォ映画終わったらまとめて読むから本当だから!)。ただ、脚本家の吉田玲子さんのことを信頼しているので、不必要な一文なんてないだろうという過剰な期待をもとに考えました。
たとえ間違っていて、脚本家に「んなこと考えてないニャロメーーwwwww」とか言われても私のなかではそういうことになったのです!!!
そんなリズが空を見上げるのは赤と黄色の鳥が飛んでいるシーン。
そして人間の姿をした青い鳥の少女は、仲睦まじくつつき合う鳥たちを目を輝かせながら見上げていた。
2.(承前)劇中曲『リズと青い鳥』第三楽章。焼け野原
作中屈指(というかエントロピー高まるシーン)の名場面といえば演奏シーンでしょう。
羽を伸ばした青い鳥がリズの元を去る決別の演奏。
傘木望美の心を焼き殺すが如く圧倒的な演奏力。オーボエの演奏は完成されていた。
あの演奏の最中、みぞれが青い鳥に見立てられていました。ただ、リードを咥えたときの演奏だけはリズが見えた……ような気がしました。
見送る側のリズ。青い鳥を閉じ込めて独り占めしていた鳥かごの扉を開くリズ。
みぞれは青い鳥と対等になろうとした。それは自立とは違うけれど、みぞれ自身の殻を破る行為。
鎧塚みぞれの演奏シーンでは羽ばたく青い鳥が描かれた。
リズの視点から見上げた先には空へと翼を伸ばす青い鳥の姿。いままで鳥かごに閉じ込めていた青い鳥はもう戻ってこないけれど、閉じ込めているよりもずっと美しく感じられた。
鳥かごを開けた傘木望美がそう感じていたら救われるな、という願望。でも傘木はみぞれの音楽にばかり目が向いてるんですよほんと傘木そういうとこやぞ。
生物学室で二人の 好きが決定的なまでに重ならないながらも、永遠に友達でい続ける呪いのシーンを経て、階段で二人が会話します。
ここまでを踏まえて聞いてほしいんですけれど、階段の下に立って見上げるの傘木望美なんですよ……。まんまリズ側に立って言う台詞がアレですよ。
望美の見え隠れしていたみぞれへの執着心がここで伝わっていればいいな絶対伝わってないだろうな。
3.他の人の感想が有益であるというお話
一番話したかったことは前の項までで終わりです。
ここからは他の人のブログなりなんなり勝手に拝借して頷くコーナーです。
わたしは自分の意見がカルピス1/100ぐらいうっすいです。今回も絞り出してもこの程度でした(張ったんだけどなあ……)。
あまり他人の意見を見聞きするとそれに流されてしまうので、普段は目を閉じ耳も閉じという感じなのですが、今回ばかりはどんな感想を抱いているのか知りたいと色々調べました。
みんなすっげえ真剣に考えてるのな……。わたしのここまでの感想なんて小学生の読書感想文にも足りないぐらい。
なので屍の骨を拾うが如く、先駆者様方のご意見を勝手にご紹介、みたいな感じです。
勝手極まりないですがどうしても「それある!」と言いたいので怒られるまでは掲載し続けます。いや、ほんと先に謝っておきますごめんなさい。
【フローズンブラウニー】さん(HP自作かな?すっごい)
10回観にいってもここまで考察できないだろうなってぐらい考えられてました。わたしの記事読んでないでさっさとリンク先100回読み直してって感じです。
みぞれの髪を触る仕草はわかりやすいぐらいに間をもたせているんだけれど、その個々の意味合いまではしっかり測れなかったので、基準としておおよその見当をつけてくれたのは嬉しかった。次見たときに自分でも腹心を当てようとはするだろうけれどw
【フローズンブラウニー】さん(ブログ名であってハンドルネームじゃない、と思う)は、羽を鬱屈させていたみぞれという青い鳥を飛び立たせるリズ役が別にいるという考察を持ち出したのが凄い面白かった。
みぞれと望美の立場逆転しか頭になかったから、麗奈と新山先生の立ち位置をそういう切り口で教えてくれた。
リズと青い鳥を一般論化させるときに決め手になるぐらい偉大な考え方。
他にも音楽考察がすさまじく、ソースや図もブログに載せていてこれ本当に個人ブログか? え、個人の感想ブログっていまここまでレベル高いの? といろんな意味ではえーと言わされた。
某所有名ラジオリスナーさんが本編考察と事後(?)妄想。
面白い呟きはいくつもあったけれど、全面に渡って将来予測を成り立たせるスキルがつおい。一連の呟きを読んで映画評と物語評は別物なんだと気づかされた(実践できるかは別として)。
あと単純に、この一連の呟き見てるともう一度映画を観たくなるから、そういうカンフル剤(?)的な役割もあるから読んで欲しい。
剣崎梨々花のキャラクター性が親近感沸いて好きなんだけれど、あいつ剥き出しの生卵渡すってどんな神経してんだよ……w
みたいな考えでスルーしていた生卵をきちんと比喩として受け止めていらしたの目から鱗だった。というか私が考えなしだった。
あと、久美子と不機嫌な顔した麗奈が苦笑いしながら顔を背けてる久美子に正常位しているシーンまで見えた。
終わり
以上が『リズと青い鳥』の感想です。
どうしても書きたかった一文について、精一杯語れたと思うので満足です。
『リズと青い鳥』は本編でゲロって考察でまたゲロるくらい心臓に弱い人にはオススメできないから、全人類が観て感想を書いて欲しい。
紹介してないだけでいろんな観点の人がいて、あの物語をハッピーエンドと言っている人もいて、なかなかに幅広いと思いました。ちょっと面白いので、しばらくこの映画の色んな感想を漁りたいと思います。
今回はこんな感じです。また何かあれば……というか二回目を観たら追記します。
次は会社をサボらないよ! でも大丈夫、最低限の給料さえあれば(熊谷で追加上映があるらしいっすね……電車が通ってるなら行けるはず!)
(パンフも何も買ってこなかったからせめてもの画像)
青色姫草でした。